Rock'n'文学

猫ときどき小説書き

2019年10月25日 町田康「猫人間と犬人間」について語る@吉祥寺ねこ祭り音楽祭「饗宴」

まめ閣下:おい、下僕よ。怠惰なる下僕よ。

下僕:なんですか、いきなり。人を怠け者呼ばわりして。

まめ閣下:だってブログの更新が全然ないではないか。はてなブログから更新催促のメールが届いておるぞ。

下僕:ああ、でもしかたないじゃないですか、今月は忙しくて、講演とかイベントとか読書会とか全然いけなかったんですもん。「汝、我が民に非ズ」の実演だって1回しか行けなかったくらいなのに。

まめ閣下:1回は行ってるじゃないか。

下僕:でもね、閣下、わたくしはこれまで実演についてはいちいち閣下にご報告しておりませんよ。音楽については一度だけ考察したことがございますけれど、実演というのは現場で体で感じるものでありますからね。直後にツィッターで叫びまくることはありますが、あとで文章にまとめたりするとどうしても分析的になっちゃって、そういうのはよくないと閣下もおっしゃっていたではありませんか。

まめ閣下:まあ音楽について語らずとも、いつもの<尊いお話>とやらがあったのではないか。それについてちらっと教えたまえよ。

下僕:はぁ、なんですか、それは。それが人にものを訊ねる態度でございますか?

まめ閣下:それは当然である。なんとなれば予は諸君の君主であり諸君は予の下僕であるからにゃ。それに、今回の実演には予だって参加しておるらしいではにゃいか。

下僕:あ、そうでございましたね。それをご報告いたさねば。

まめ閣下:よろしい。

下僕:先日行ってまいりましたのはこちら。吉祥寺ねこ祭りの「猫もよろこぶ音楽祭 饗宴」です。場所は老舗ライブハウスのスターパインズカフェ。図書館、テンテンコさん、山田稔明さん、そして汝、我が民に非ズの4者ジョイントライブでありましたー。

 

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下僕:イラストレーター町田尚子さんの絵をお借りしたというこのポスター最高ですよね。

 

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まめ閣下:いろんな猫がいるにゃ。よく似ているようでそれぞれがみんな個性的、にゃかにゃかいい表情だにゃ。

下僕:そうでございましょう。ほら、この子なんか、閣下っぽいですよね?

まめ閣下:それはない。にゃんとなれば、予は唯一無二の存在であるゆえ。

下僕:はいはい(おざなり)。さて、こちらがライブ会場のスクリーンです。ここに、いろんな方から送られてきた猫さんたちの写真が写されたわけです。

 

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下僕:閣下の写真も何枚か、「汝、」の実演前に流してもらいましたよ。これとかね。

 

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まめ閣下:にゃんだ、これは。もっと優美で高貴な予の写真も腐るほどあるはずだが。

下僕:なかなか好評でございましたよ。あとは、ギター弾くはなちゃんとか、昔哺乳ボラをしてたとき育てた兄弟たちとかも、大写しにしていただきましたー。

 

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まめ閣下:そういえばこんなちびっこどもがいたこともあったにゃぁ。名はなんといったかな?

下僕:太尾、巻尾、うに、コツメの4匹、合わせて太巻兄弟。

まめ閣下:ひどいネーミング。太巻きにうにまではわかるが、コツメって鮨に関係ある?

下僕:白黒の子、1匹だけ長ぽそくてコツメカワウソみたいだったんで。太尾だって鮨と関係ないですよ。茶トラの二匹、よく似ていて見分け方が尻尾が太いのと巻いてるのだったから。で、黒い子は洗うとイガイガのうにみたいだったんで。

まめ閣下:みんなちょっとおっきくなったと思ったらいつの間にかいなくなっていたな。

下僕:コツメだけ戻ってきたじゃないですか。4か月過ぎくらいかな、ワクチン打つまでうちにいましたよ。その後別の預かりさんに移動して他の一人っ子と合流したんです。

まめ閣下:ま、いずれにしても予に謁見はなかったからな。

下僕:あー、すみません閣下、このままだとなんだか猫たちの話で終わってしまいそうです。

まめ閣下:いかん、いかん。枕がやたら長いのはM田さんの講座だけでいいからにゃ。まぁ、諸君の話は中身がないゆえの笠間市ならぬ嵩増しだがにゃ。

下僕:お、おほん。まあ、その通りでございますがね。はいはい、町田さんの<尊いお話>のお話でございますね。4演者ということで時間が短かったけれどいつも以上に濃縮された熱い実演で大いに盛り上がりましたが、合間の町田さんのお話もさすがでございました。やはりそこは猫にまつわるものということで、「よく自分は犬派か猫派か、なんてことを訊かれたりするけれど、その言葉は単に犬が好きだから犬派、猫が好きだから猫派というような意味合いだと感じる。実はそうではなくて、人間は犬人間と猫人間の2種類にきっぱり分かれるのである。犬人間が猫と暮らし、猫人間が犬を飼うのだ」というお話をされました。

まめ閣下:むむ、どういうことじゃ?

下僕:まあこれはわたくしの解釈ですが、猫のように尊大で自由気ままな生き物と暮らす場合人はまさに従順な犬のように仕えることが必要である、一方犬を飼う人というのは自分が猫のように尊大で自由気まま言い換えればわがまま勝手であるから、命令に喜んで従ってくれる犬の存在を必要とする。つまるところ、閣下の下僕として傅いているわたくしなんぞは正真正銘の犬人間ってことでございます。

まめ閣下:にゃるほど。しかしお前、尊大で自由気まま、わがまま勝手とは言いたい放題ではないか。

下僕:ああ、それは町田さんが言ったわけではなくわたくしが勝手にそのように捉えたものでして。それはまあ、わたくしが毎日いっしょに暮らしているのは閣下ですから、いたしかたありませんでしょう。猫といえば尊大。

まめ閣下:しかし犬猫両方と暮らしている人っていうのはどうなるんだ? 町田さんだって両方と暮らしてるんじゃなかったかにゃ?

下僕:あい、さいざんすね。わたくしが思うに、それは相手によって自分のありようが変わるってことじゃないでしょうか。町田さんの猫に対する態度は、奈奈さまに対する献身的な奉仕ぶりに見て取れるようにまさに従順な僕(しもべ)のごとしでありますし、犬たちに対してはおそらくスピンクとの関係に現れているように対等な兄弟や仲間、あるいはちょっといけずな悪友みたいな態度で接しているのではないでしょうかね。猫といるときは生粋の犬人間、犬といるときは猫人間。

まめ閣下:にゃるほど、どちらか一つというわけではない、と。

下僕:わたくしだって、閣下たち猫のひとたちに対してはバリバリ犬人間でありますが、それ以外、自分一人のときや他の人間たちに対してはかなり猫っぽい態度および思考形態だと自覚しております。あ、そうか。人間がきっぱり2種類に分かれるっていうのは、つまるところ犬猫のどちらか、もしくは両方と人間は暮らすべきだという話ではないでしょうか!

まめ閣下:それは穿ちすぎ、というものじゃないかと思うけどにゃ。