Rock'n'文学

猫ときどき小説書き

第47回朔太郎忌 猫町観光案内@前橋テルサ

まめ閣下:下僕よ、昨日は一日出かけておったようだが。

下僕:はいな、こちらを観るために、前橋まで行っておりました。

f:id:RocknBungaku:20190512093353j:plain

まめ閣下:前橋とは、めずらしい。

下僕:はい、わたくし初前橋。前橋ベイベー、はじめての来日だぜっ! ってなノリで行ってまいりました。お天気もよく、なかなか旅感たのしゅうございました。少し早めに現地入りして、前橋文学館でじっくり萩原朔太郎の展示みたり、

f:id:RocknBungaku:20190512094256j:plain

ちょうど「現代詩手帳の60年」という特別展示があったんで、こちらでバックナンバー貪り読んだりしてまいりました。

f:id:RocknBungaku:20190512104334j:plain

f:id:RocknBungaku:20190512094325j:plain

f:id:RocknBungaku:20190512094346j:plain

お昼も食べたしビールも飲んだし。

f:id:RocknBungaku:20190512094413j:plain

f:id:RocknBungaku:20190512094427j:plain

まめ閣下:おいおい、楽しそうなのはじつに結構だが、それで、肝心のイベントはどうだったんだ?

下僕:ああ、それそれ。なかなか盛況でありましたよ。

まめ閣下:だから、それをちゃんと描写してみぃ、と言ってるんだけど。

下僕:はいはい。第1部は島田雅彦さんと松浦寿輝さんの対談で、タイトルは「詩と小説と音楽と」。内容はお二人のこれまでの作品などをとりあげつつ、詩と小説の言葉の違い、音楽とのかかわりなどについてでありました。とくに朔太郎にちなんで、というわけでもなく、内容も一般的だった感じがしましたね。あ、島田さんが歌詞を書いてるってのは初耳でした。母校の校歌の歌詞もかかれたとか。あと、オペラのリブレット(台本)も手掛けてらっしゃるってのも知らなかったです。来年の夏には、アンドロイドが主役の新作を新国劇で上演されるそうで。

まめ閣下:ふうん、なんだ、その「耳より情報ブログ」的な表層発言は。

下僕:ははは、やっぱり閣下は侮れませんな。お茶濁そうって思ったの、ばれちゃいました? 詩と小説の言葉について、という話の中身は、個人的にはこれまで某所で何度も耳にしていたことでありまして、たとえば「詩人は食えない」って話ですとか。小説家、脚本家、作詞家、なんていう「家」がついているのは職業としてそれで食べていけるものだけれど、詩人ってのは「人」ですから。カテゴリーとしては「老人」「病人」「廃人」などと同じもんでありまして、っての、某呑み会でしばしば講師から聞かされていた話でありまして。

まめ閣下:ま、そうだな。予もそれは知っておる。

下僕:ああ、そうだ。島田さんが「詩人はダンディでないと」という発言をされて松浦さんがちょっとへこんだの、笑っちゃいましたよ。でも前にどこかでも読みましたが、残っている写真のお面は、圧倒的に詩人のほうにイケてる方が多いらしいですね。それに対して小説家は・・・と。

まめ閣下:おお、それ、予もツィッターでみた。中原中也だってあの写真がなければこんなに後世に読まれたりしなかったんじゃないかってのだろ?

下僕:そうそう。で、島田さんが、「詩というのはそもそも伝染性のある呪文である」と言ったのにわたくしも「おお!」と納得。詩というものの起源を考えるならば、詩人は神(のような存在)のことばを伝えるシャーマンであったはずで、魔力的なものを有している人であったはず。常人と異なる魅力、威力を備えていなければ、誰もその言葉に耳を傾けない。だからその末裔であるところの詩人というのは当然人を惹きつけるものを備えているわけでしょう、という話は面白かったです。

まめ閣下:ロック歌手みたいだな。

下僕:まあ、おんなじところにいるのかもしれませんね。あと、現代の資本主義社会においての「言葉」の価値が「=金になるかどうか」ってなってるって話も、悲しいかな頷けました。今お金になる言葉といえば、キャッチコピー、プロパガンダ、ヒット曲の歌詞。それにひきかえ小説は難しいですね、としみじみされるお二人。

まめ閣下:いやいや、そのご両名がなにをおっしゃるのか。

下僕:そうですよねー。あ、だんだんと大事なことが思い出されてきましたよ。

まめ閣下:またか。やっぱりお前の頭の造りは・・・もう。

下僕:売れないってことについて松浦さんが「小説は、一種のコミュニケーション行為だから、読まれることによって成立するものである。だから読者が必要。(より多くの)同時代の人に届かないと完結しない。それに対して詩は、存在すれば成立するもの。たとえそのとき誰にも読まれなくても、凍結した細胞とかタイムカプセルみたいなものに封印されてどこかの未来で誰かのもとに届くことがあればそれでいいいのでは、といいうようなことをおっしゃってて、いい話だなと思いましたね。でもだからやっぱり詩では食べていけないんだな。

まめ閣下:それが第1部。で、第2部は?

下僕:朔太郎の「猫町」という短い幻想小説をベースにしたリーディングシアター、つまりは朗読劇でありました。劇自体は現代を舞台にした創作なんですけど、そのなかで、朔太郎役で町田さんが「猫町」のテキストを朗読するんですよ。フォーマルなダークスーツ(でも絶対デザイナーズもの)に身を包んだ町田さんが、あの声でささやくように朔太郎のテキストを読み上げると、もうそれだけで一気に異界へといざなわれてしまうんでありますよー。そんなふうでありながら、最後にはひっそりと青い猫の人形なんか持たされて「にゃー!」なんてやってしまうお茶目さが、もう。

まめ閣下:おい、またおまえの病気が・・・。

f:id:RocknBungaku:20190512102142j:plain

下僕:ん? 「この家の主人」ってことは、つまり閣下のことではありませんか。

まめ閣下:あ、しまった。ちょっとテキストと意図が合致していなかった。

下僕:まぁ、、そういうところもキュートですよ、閣下も。