Rock'n'文学

猫ときどき小説書き

『詩そして電子音』@熱海未来音楽祭

下僕:なんかまた台風来るみたいですね。

まめ閣下:もう昨日あたりからずっとひげがびりびりしておる。

下僕:この前の被害もまだずいぶん残っているというのに、もう自然災害やめてほしいです。しかし本日はこれからイベントの裏方でおでかけいたしますゆえ、閣下とのんびり無駄話している場合ではございませんな。

まめ閣下:まったくもう、忙しいやつだな。

下僕:そんなこと言っても閣下、これは動物愛護のためのイベントですからね。大事なミッションでございますよ。

まめ閣下:そうであった。せいぜいがんばってこい。

下僕:はい、その前にちょっとだけ、先週末に日帰りで見てきたイベントについてご報告いたしますよ。

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熱海を舞台に2日間連続で様々な音楽やアートのパフォーマンスが繰り広げられたもので、わたくしは1日目の路上パフォーマンスとその夜、起雲閣という素晴らしい建物のなかで行われた「詩そして電子音」という朗読ライブを観てまいりました。

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まめ閣下:それはまた「康さん病」活動かね。

下僕:まあ、そう言わないで。ヒカシュー巻上公一さん(朗読&テルミン)、佐藤正治さん(パーカッション)、Anna Lerchbaumerさん(電子楽器)、Andreas Zisslerさん(電子楽器)、それに昼の路上パフォーマンスから飛び入りで参加された大熊ワタルさん(クラリネット)による演奏と、町田さんの朗読のコラボレーションでありました。ドラムスやらクラリネットは普通に楽器という認識ですけれど、あとのお三方が演奏されるのは電子楽器、そのうち今回初めて見るテルミンというのはまあ一応形状的にも演奏の様子なんかも電気的ではあるけれど「楽器」の範疇として認識できるものでありました。しかし海外からやってきたお二人の演奏(?)に用いられるものは、楽器というよりも器具、演奏というよりも実験的趣がありまして、これがいったいどんなものを作り出すのか、という予測不可能な期待がありました。ここがそのお二人の主戦場です。PCでコントロールしつつ、針金やらプラスチックカップやらとおおよそ楽器とは思えないツールを利用してさまざまな音を奏でていました。

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腕に電極をつけて筋肉の反応で音を出す、みたいなこともやっていて、その動きを紙に写し取っていたのか、演奏後にこんなものも残されておりました。

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テルミンというのも面白かった。直接触れずに手の動きだけで音を操っているように見えて、幻想的というかSF的というかパフォーマンスの趣があります。そこにドラムスやクラリネットという人間の肉体に直接結びついて奏でられる音が絡み、さらに切り込んでくるのが、人間の声というもっとも肉体的な音が発する言葉。電子的な音、身体的な音、人間の声と言葉が響きあってスパークする、その瞬間を目撃する、全身で受け止めるような時間でした。

まめ閣下:おもしろそうではないか。

下僕:はい、かなり揺さぶられました。町田さんの朗読は、まあすごいに決まっているわけでこちらは予測して言ったわけですけれども、中原中也や自作の詩に加え、「昭和枯れすすき」、これはびっくりしました。

まめ閣下:「昭和枯れすすき」?

下僕:ああ、まだ18歳ですから閣下はご存知ありませんね。わたくしが幼少のみぎり、大人気のテレビドラマがございましてその劇中歌としてヒットしました。さくらと一郎だったかな。この歌詞の一部を町田さんが朗読をしたのですけれど、圧巻でしたね。凄すぎて死ぬる、と思った。「いっそきれいに死のうか」なんて言われた日にゃあ、にゃあ。

まめ閣下:ピッ、ピー、康さん病、警告警告。

下僕:はぁはぁ(息を整える)。あと、自作の「こぶうどん」も、食券の買い方を説明するくだりにICカードも使えるという現代風なアレンジも加えられていて、語り口もあれですから、もう腹を抱えて笑いましたよ。

まめ閣下:熱海まで行った甲斐があったというわけだにゃ。

下僕:はい、路上パフォーマンスと夜のイベントの間に結構時間があったので熱海の街をずいぶん久しぶりに散策いたしましたしね。観光地であるサンビーチとか来宮神社も行きましたが、街中がなんか妙にとんがったセンスがある店とか昔風のものとかごちゃごちゃにある感じで非常におもしろかったです。ワンデイトリップ、堪能いたしました~。

あ、そうそう。来宮神社は禁酒の神様だって聞いたのでわたくしもお参りしてまいりましたよ。この地に転居されて町田さんがきっぱりお酒をやめたというのもこの神社の霊験かと思うとぞくりとしましてね。

まめ閣下:ほう。それは殊勝な心がけじゃないか。とうとう酒をやめる気になったか。

下僕:あ、その気だけはずいぶん前からずっとあるんですがね。

まめ閣下:しかしお参りしたとは思えんな。さっそくおとといもずいぶん酔っぱらって帰ってきたんではなかったかな。

下僕:あっ、しまった。それを言わないでくださいよー。

まめ閣下:つまるところ、俗人にはいかな力ある神社の力を持ってしても無理、とくに諸君のごとき真剣みにかける者には霊験も及ばず、ということである。口先だけではいかん、本気でやれ。

下僕:あい。まったくもう、おっしゃる通り、恥じ入るだけでございます。

 

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